ネットで「勝ち組」になる成功の方程式は変わる?

ドナルド・トランプが去年の11月8日に大統領に当選したとき、「えっ!?」という驚きの声が上がりました。

我々は普段、フェイスブックからニュースを絶え間なく取得しているわけだけど、それを見る限りヒラリー・クリントンが劣勢だとは思えなかったからです。

しかしフェイスブックは、同じ興味、同じ価値観、同じ境遇を共有する仲間を中心としたつながりであるため、自ずと同じフィルターを通したニュースばかりを共有する結果になってしまっていることに、我々は無頓着だったわけです。

また、フェイスブック・ユーザーの注意を惹く、ありえないような作り話も、真偽を問わず、面白がってどんどんシェアされました、いわゆるフェイク・ニュースが跋扈したわけです。

案の定、大統領選挙の後で、そのようなフェイク・ニュースを無差別にタレ流ししたフェイスブックに対し、ユーザーからの突き上げがありました。

またその頃を境にして、ユーザーがフェイスブックやツイッターなどのプラットフォームを見る目、ひいてはユーザーが影響力のある(=それはすなわちフォロワー数の多い)発言者に対する風当たりも強くなったように感じます。

ちょうどその頃、僕は友人の田端信太郎君に一冊の本を「読んでみなさい!」とレコメンドしました。

この本です。



なぜこの本を彼に推奨したかは、一番後に書きます。

それは置いておいて、このやりとりと相前後して、僕はSNSの使い方を大幅に改変しました。

まずツイッターのフォロワー数を、バッサリと落としました。それからフェイスブックも「フォローから外す」のボタンをどんどん押して、どうでもいいアップデートに煩わされ、時間を浪費することの無いように、どんどん数を絞り込んだのです。

実は、これは僕だけがやっていることではなくて、こちら(=アメリカ)のユーザーの多くが、別に示し合せるでもなく、自発的にやりはじめたことです。

ここまでのネット社会は、ひとことで言えばアテンション・ベースト・ビジネスモデルでした。

つまりアドセンス、YouTube広告、フェイスブック広告などは、いずれもユーザーのアテンション(=目に止まる事)を糧として、広告収入を得てきたのです。

言い換えれば、こんにちのインターネットは広告モデルで駆動されているということです。

広告モデルが今日の王道である以上、アテンションをゲットできる発信者が王様、ないしは王女様です。

僕がイケダハヤトはあちゅうのやっていることをつぶさに観察する理由は、アテンションをゲットする術を彼らが心得ており、そこに「学び」があるからです。

ツイッター、インスタグラム、ブログ……これらは誰でも簡単に始めることが出来るので、参入障壁は、ありません。

だから一見、イケダハヤトのような有名ブロガーになるのは、とても簡単なような印象を受けます。

しかし……

これはたぶん読者のみなさんも既に試行済みだと思いますが、実は継続的に読者のアテンションを惹きつけ続けるのは、それほど簡単ではありません。

先行者は、すでにフォロワーが多いので、発言時のインパクトも大きく、いわゆる先行者利益にあずかります。だからどんなにイケダハヤトやはあちゅうが嫌いでも、現状を覆すのは難しいのです。

しかしattention grabbing、つまり「炎上狙い」がまんまと収益につながるのは、上で述べたアテンション・ベースト・ビジネスモデルが今後も未来永劫に続くという前提があってのこと。

テクノロジーやメディアの世界では、栄枯盛衰は激しいです。

絶対不動の地位だと思われていたウインテル(=ウインドウズ+インテル)の影が薄くなったように、テクノロジーの世界で「ゼッタイ」はありません。

もうひとつの例としてアメリカでテレビが娯楽の王座に座っていた頃、支配的なビジネスモデルは広告モデルでした。CBS、ABC、NBCという、いわゆる3大ネットワークは、大手ブランドに広告枠を売ることで寡占を築いたのです。

しかしアメリカのテレビの世界では広告モデルだけに依存する3大ネットワークの支配は崩れ、ケーブルのようなサブスクリプション・モデルが登場しました。いまそのケーブルは、ネットフリックスに喰われようとしているわけです。

広告業界では:

A: Attention(その存在に気付き)
I: Interest(興味が湧き)
D: Desire(それを欲するようになり)
A: Action(ポチる)

というサイクルを完結させることが必要とされます。

いまのネットでは、Attentionの獲得のために企業が沢山お金を使っているけれど、それが「商品が実際に売れた!」というゴールまで持ち込めているかどうか? といえば、それは疑問です。

つまりネット広告は未だ日が浅いので、広告効果をシビアに精査するのは「まだ早いんじゃないか?」ということで広告主が大目に見ている部分が少なからずあるわけです。

でも究極的にはリターンを生まない広告は打つ意味がありません。

ネット広告の予算は+30%くらいで成長しているけれど、ネット通販の成長率は+20%を少し切る程度です。またリアルでの小売売上高の成長率はせいぜい2%程度でしょう。すると費用対効果で、必ずしも満足のゆく結果を享受していない広告主も多いはず。

広告主がネット広告に対し、冷めるときは、必ず来ると思います。それがいつになるかはわからないけれど。

その日が来たら、上に書いたようなAttention grabbingだけをやっていたら、愛想を尽かされると思うのです。

ネットでは、極端な発言をした方がアテンションを獲得しやすいです。また実名で、自分というものを前面に押し出したほうが、キャラが立ちやすいです。そういうスレスレの、胆力のある態度の方が、結局、言い合いになると勝ってしまうわけです。

しかし……

そのような拡大した自我は、「オレが、オレが…」というエゴの世界と紙一重です。冒頭に紹介した本は、そういう肥大した自我が、いかに非生産的か? ということを述べた本です。


猪瀬某のエロビデオのブックマークが流出したとか、そういう実に下らないことでもアテンションをゲットできる現在のSNSは、壮大な暇つぶしに他ならず、日本人の生産性が世界でも群を抜いて低いのも頷けます。

でも、インターネットはAttention grabbingのためだけにあるのではないし、別の使い方、もっと違った効用もあるはず。

世界のユーザーがそれに気付いたとき、これまで通用してきたネットで「勝ち組」になる成功の方程式は変わるはずです。

これからは、そういう地道な使い方を、もっと研究すべきだと思います。

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