ベトナムで唯一(!?)の無人コンビニ「TOROMART」に行ってみた(山谷剛史)

ベトナム南部の最大都市「ホーチミンシティ」にベトナム唯一の無人商店があるという。ホーチミンシティにいた筆者は、その無人商店の存在が気になり、行ってみた。 名前は「TOROMART」。2店舗あるが、お勧めはホーチミンシティの中心で「1区」のビジネス街の店舗。東南アジア各国で普及しているライドシェアアプリ「Grab」でバイクの後部座席に乗ってサクッと走るのがベストだが、1番バスの終点からも歩いてすぐの場所にある。ベトナムの家は「ペンシルハウス」と呼ばれるほど細い家が当たり前。TOROMARTも飲食用の机と椅子が並んでいる入口の奥に店舗が続いている。 ▲気軽に入れる店だが誰もいない。それもそのはず......? ポップな感じの店内に入ると、そこは自動販売機がずらりと置かれていた。「無人のスマート店舗」とはいうものの、その実は北関東や山陰や東北などで見かける自動販売機が並べられた店とコンセプトは変わらない。ポップな店舗だが、客は僕1人で、ときどき店舗関係者が一番奥にある扉から出入りして「手伝いますか?」と声をかけてくれる。 店内には液晶ディスプレイがぶら下がっていて、店のイメージ動画が表示されている。動画の中では10代〜20代とおぼしき男女が店内を埋め尽くし、イケメン男子が「無人商店で、スマートフォンにかざすだけでキャッシュレスで買い物ができる。すごーい!」と感動して、スマホでキャッシュレスで買う様子を撮りまくってはSNSにアップする動画がエンドレスで流れている。リアルはテクノロジーに興味ある40代の外国人がボッチ。落差は激しい。 ▲ディスプレイの中の男子がSNSで実況している。拡散歓迎なのだろう 品揃えはペットボトルや紙パックの各種清涼飲料水はもちろんのこと、ポテトチップス類のお菓子やプリンなどのデザートのほか、紙コップ式のホットコーヒーや、生のココナッツジュース、温めた弁当を出してくれる自販機まである。ベトナムでは自販機はモールやビジネス街や高級マンションで希に見ることはあるが、ここまで揃っていると確かにベトナム人目線では最新スポット! と言えるかもしれない。 支払いは現金とキャッシュレス決済(スマホ決済)の両方が使える。TOROMART専用キャッシュレス決済「Toro」のほか、Grabが展開する「Moca」、それに「VMore」の3種のサービスが使える。ベトナムではキャッシュレスがこの3種類以外にも日本ほどではないものの乱立大混戦状態にあるなかで、一番無難なのはGrabがお得に利用できるMocaだろう。 ▲キャッシュレス決済の種類をタッチして選ぶ。現金で支払うこともできる しかしここで敢えてスマートコンビニの意図を汲んでToroを登録してみよう。Toroに登録すると実際のクレジットカードでのチャージ額に対し1割増のボーナスをつけてチャージしてくれるという。 まずは身分チェックも兼ねて電話番号を入力し、ショートメールを受け取り、会員登録を完了させる。このサービスもそうだが、海外のネットサービスを導入するなら、空港で電話もかけられるSIMカードを購入しなければならないわけだ。そのあとクレジットカード情報を入力するのだが、非常に面倒くさい。クレジットカードの番号や名前や有効年月を入力するだけでなく、ベトナム語で住所をはじめとしたカード保有者番号を求めてくる。ジュースや弁当を買うのにこれはたまらんと断念した。 それではキャッシュレスではなくキャッシュで買おうとしても、導入されている自動販売機がまたUIがひどく使いづらい。まず商品の実物のところに値段が書いていないので、商品の値段がいくらかわからないという大問題がある。そのくせ自動販売機はタッチして操作したりお金を入れたりする部分を中央に、透明な商品棚を両脇に用意する、つまり2つ分の商品棚を管理するものだから、タッチパネルをパッとタッチしても買いたい商品ではないほうの商品一覧が表示され「買いたい商品が画面に表示されてないぞ!」と混乱する。 ▲両隣の冷蔵庫に入った商品をタッチ操作で買うことができるが、選び方がわかりにくいのだ 日本はもとより、無人スマート店舗ブームがあった中国で自動販売機が多数出たが、それらに比べ、あまりに買いにくい自販機である。以前からITの面においてベトナムは中国の劣化版後追い製品を出すきらいがあり、つくづく変わらないなあと感じたのだった。加えて誰も客が来なかったのは、2件隣に便利なミニストップがあるというのもあるのだが。 ではこのホーチミンシティのスマート無人店舗を見る価値はあるのだろうか。さすがにこれだけのために見に行くのは勧めないが、観光ついでに見るのはアリだと思う。 TOROマークの自動販売機で揃っているということもあり、スマートショップではなく同社自動販売機の体験コーナー、あるいは自動販売機のショールームとして見に行くなら面白い。種類の異なる自販機製品をこれほど揃えた無人販売店は実は中国でも見たことがない。また日本の自動販売機のUIは非常に使いやすいものとなっている中で、徹底的に使いにくい自動販売機のUIを体感にしにいくといろいろ考えさせられるだろう。 またTOROMART以外においても、モールなどで中国の後追いで中国の自動販売機がベトナム向けにローカライズされて、言語面だけでなく元々のキャッシュレスオンリーの対応から現金対応に変わって導入されているのでそれを見に行くもよしだろう。ホーチミンシティに旅行に行く機会があれば、ちょっと3時間ほど時間をとって足を運び、試しに買い物にいってみるくらいがいいかもしれない。

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