トランプ政権の「イスラム過激派」に対する現状認識は「冷戦」に相通じる

ドナルド・トランプは国家安全保障補佐官に元陸軍中将、マイケル・フリンを指名しました。

これは色んな意味で興味深い人事です。

まずフリンは共和党員ではなく、民主党員です。

実際、彼はオバマ大統領から国防情報局長官に抜擢されたことがあります。ところがフリンはオバマ政権のイラク政策が「ぬるすぎる!」と批判したため、解任されてしまいます。

フリンはISに代表されるイスラム過激派(Radical Islamism)と戦うに際して、具体的な方法論を持っている人として知られています。

それは彼の著書、「The Field of Fight」の中で明らかにされています。この本は、第二次世界大戦後、雑誌「フォーリン・アフェアーズ」上に掲載されたジョージ・ケナンの「ソ連の行動の源泉」という論文と比較されています。

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(ジョージ・ケナン、出典:ウィキペディア)

第二次世界大戦ではアメリカとソ連は連合国として同じ側で戦いました。しかしドイツが降参すると、アメリカとソ連は次第にぶつかり合うことが多くなります。それは「資本主義」対「計画経済」、そして「自由民主主義」対「全体主義」というイデオロギーの対立でもあったのです。

国務省の政策企画局長だったジョージ・ケナンは、どうすればソ連の動きに対抗できるか? について論陣を張ります。ソ連がその影響圏を拡大する目的でどこかの国に働きかけようとするなら、それに対してアメリカが一々対抗し、ソ連に対してプレッシャーを与え続け、これを封じ込め(Containment)なければいけないというのが彼の考え方だったわけです。

この、「世界のあらゆるところで共産主義に対抗する」という決意が、その後の米国の外交政策の決め手になりました。

こんにち「共産主義」の部分を「イスラム過激派」に置き換えれば、それはマイケル・フリンの主張にかなり近いものになります

フリンは自身の考えを次のようにまとめています。

1. イスラム過激派との戦いは、冷戦の時と同様、米国のすべての軍事・経済力を傾けて、徹底的に打破しなくてはいけない相手だ。

2. イスラム過激派は、攻撃の場所を選ばない。だから我々も全ての場所や局面でイスラム過激派に対抗しなくてはいけない。イスラム過激派がアメリカ以外のどこかの国に巣食うのならば、アメリカはその国がイスラム過激派を駆逐できるように支援すべきだ。

3. イスラム過激派に「隠れ家」を提供するような国に対しては、アメリカは断固として立ち上がるべきだ。現在、アメリカが「友好国」と考えている国の中にも、そういう「隠れ家」を提供している国はある。

4. イスラム過激派との戦いは、イデオロギーの戦いだ。だから彼らの「聖戦」に勝つためには我々も理論武装しないといけない。


トランプがマイケル・フリンを国家安全保障補佐官に任命した人事を目撃し、イスラム圏のアメリカに対する考え方には変化が出始めています。

その具体的な例が石油輸出国機構(OPEC)です。11月30日のOPEC総会を前にOPECメンバー国の中のイスラム国家は、対決姿勢を弱め、協調を模索しはじめています。(サウジアラビアがロシアとの協議を取りやめたというニュースは、重要ではありません。なぜならロシアは回教国ではないからです)

今回の総会で減産が発表されるかどうかは未知数ですが、「ぜったい減産など発表されるはずはない」という思い込みは捨てた方が賢明だと思います。




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