ICOトークンって、なに?

ICOトークンについて説明します。

まずICOとは(Initial Coin Offering)の略で、株式で言うところの新規株式公開(IPO:Initial Public Offering)のような「資金調達の手法」を指します。ICOは仮想通貨を絡めた資金調達の場面だけで使用される表現です。

つぎにトークンとは何か? ですが、これは昔、地下鉄などの乗り物の乗車券または専用コインを指しました。下は、かつてニューヨーク地下鉄で使用されていたトークンです。

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この他、遊園地で乗り物に乗る際やゲームセンターでピンボール・マシンとかレーシングカー・ゲームをやる際、まずトークンを購入し、それを投入するとゲームが始まる……そんな使い方がされていたわけです。

デジタル取引の世界では、この「乗車券」の意味が転じて、「一回しか使えないパスワード」とか「電子的な引換券」の意味で使われます。

ICOトークンは、ビットコインやイーサリアムのような仮想通貨に交換できる引換券と考えれば良いでしょう。

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以上が乱暴なICOトークンの説明です。次にICOの持つ経済的、社会的な意味合いについて少し書きます。

まず「IPOという資金調達方法があるのに、なぜICOするの?」という素朴が疑問が湧きます。

その答えはカンタンで、IPOはハードルが高く、誰でもがおいそれと出来る事ではないので、「お手軽な資金調達方法」であるICOで済ます……これが流行になっているということです。


しかしICOの法的な立ち位置は、せいぜい「ビミョー」であり、中国や韓国では違法であり、禁止されています。米国では、証券取引委員会(SEC)がThe DAOのICOに関し「あれは有価証券であり、有価証券を、ちゃんとSECに登録せずに販売したのは違法行為だった」という判断を最近、示しました。

つまり日本を除けば、ICOは、とてもフラフラした法的根拠の上に立ち、「見切り発車」的に強行されているのであり、これが後で禍根を残すリスクはじゅうぶんにあるということです。

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なぜICOの、そのようなグレーな運営実態を問題にするか? と言えば、こんにちのICOでは、詐欺同然の案件が過半数を占めているからです。

いずれそれらの悪質なICOの中から破綻するものが出れば、社会問題に発展し、ICO全体が世間からボコボコにされる可能性があります。そのような「魔女狩り」のような状況になれば、折角、真面目に、ちゃんとやっているICOも、味噌も糞も一緒にされて、ボロボロになるリスクがあります。

実は、これは株式市場の投資家の目から見れば「いつか来た道」です。

1920年代に米国で株式ブームが起き、誰もが投機に熱中しました。しかし1929年に「暗黒の木曜日」の暴落が来て、多くの投資家が破産しました。下はそのときゾンビのように放心してフラフラとニューヨーク証券取引所前に集まった群衆の写真です。

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暴落の後、人々は暴落の原因を究明しようとしました。もちろん暴落は、色々な要因が複雑に絡み合って起こったことであり、ひとつだけとは限りません。でも調査を進めてゆくと、株式市場のお粗末な運営実態というものが、だんだん明るみに出たのです。

一例として、当時IPOされた企業の50%は実体のないペーパー・カンパニーでした。これはこんにちのICOの状況に酷似しています。

そこでアメリカ国民からは「株式市場を野放しにするな!」という声が上がりました。こうして暴落から4年後の1933年に証券法が成立するのです。

ビットトレード

証券法は、株式を上場しようとする企業は、ちゃんと米国証券取引委員会に届けを出し、さらに四半期の決算内容を開示することが義務付けられました。

ちなみに、こんにちのICOでは届出の義務はありませんし、四半期の決算内容の開示もありません。あるのは「ホワイトペーパー(白書)」と呼ばれる、自分のICOの宣伝パンフレットに毛が生えた程度の手引書だけです。「ホワイトペーパー」を出しているICOは未だ良心的な方で、ぜんぜんそういう基礎的な情報すら無しでICOするケースもあります。

1934年には、今度は証券取引所法が制定され、取引所や、株式を扱う証券会社の在り方が厳しく規定されました。

つまり冒頭で説明した「なぜIPOのハードルは高いのか?」ということですが、それは大暴落とそれに続く大恐慌という教訓の後で、(資金調達市場のハードルは、高い方が良い)と国民が一致して願ったから、そうなったのです。

そして初代のSEC長官に抜擢されたのは、ジョセフP.ケネディという人です。この人は、有名なジョンF.ケネディのお父さんです。

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この人事は、物議を醸しだしました。なぜならジョセフP.ケネディは、もともと相場師で、買占め屋だったからです。

でもフランクリンD.ルーズベルト大統領は「盗人を捕まえるには、その世界を熟知しているドロボウを使えば一網打尽だ!」と言い、ケネディを推しました。

その頃までにケネディは大富豪になっていたので、もうこれ以上、おカネを稼ぐ事は要りませんでした。かれが一番欲しかったのは、庶民から尊敬されることです。だからケネディは鬼のような勢いで、ウォール街の悪党たちに襲いかかって行ったのです。

SECが、こんにちでも、世界の証券監督当局の中でも最も恐ろしい存在なのは、この「パパ・ケネディ」以来の伝統なのです。

第二次世界大戦後、日本の証券法はアメリカの証券法を参考にするカタチで整備されました。

しかし近年、日本の法律とアメリカの法律は、だんだん別れ始めています。その理由は、資本市場を活性化するためには、すこしルールを緩くした方が良いという考え方があるからです。

いま仮想通貨を巡る行政では、日本が世界をリードしています。これは良い事であり、僕は今後も日本が世界の仮想通貨行政のペースセッターになって欲しいと願っています。しかし、その一方で、魑魅魍魎たる怪しいICOが跋扈しており、それらのうちの幾つかは、いつ破たんしてもおかしくない状況であることも確かです。

だから現在の仮想通貨ブームは、薄氷を踏むような恰好で進行しているのだという危機感を我々ひとりひとりが持つべきでしょう。

「じゃあ何で広瀬の野郎はVALUを支持しているのだ!」


そういう批判が飛んできそうですね。

僕が(ICOトークンはヤバいけど、VALUはオッケー)と判断した理由は、VALUは「何も約束事が無い」からです。もっと踏み込んで言えば、株主としての投票権も無いし、配当の分与を受ける権利も無いのです。見返りゼロ、本源的価値ゼロということが始めから明言されているにも関わらず、人々がそれを買うのは、「タデ食う虫も好きずき」であり、違法な要素はありません。またVALUはどの角度からツッコミを入れても、到底有価証券とは言えない、チンケな存在です。

チンケな存在だからこそ、レジリエンスがあるのです。

一方、ICOの最大の弱点は「これをやります」という約束、英語で言えばdeliverablesがあるということです。はじめから守れもしない空約束をして、投資家から資金を巻き上げる……これは「投げ銭」とか「お恵み」に近いVALUとは、似ても似つかぬ行為です。


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