サウジアラビアの聖地、メッカへの巡礼をイランが今年は取りやめ スンニ派とシーア派の対立の先鋭化で

イラン政府がイラン国民に対し「今年はメッカへの巡礼を禁止する」と発表しました。

これはかなり重要な事件です。

メッカはイスラム教の聖地で、回教徒なら一生に一度はそこを訪れることが回教の教義で奨励されています。この巡礼のことをハッジと呼びます。

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巡礼から帰ってきた回教徒はハッジと呼ばれ、周囲の人たちからお祝いされます。これはなかなか説明しにくいのですが、乱暴な言い方をすれば「Mr.」が「Sir」になるようなノリです。

僕はむかしブルネイ投資庁が顧客だったのですが、ある年、運用部長がメッカに巡礼に行きました。

仲良くしていたファンドマネージャーから「アブバカールがメッカから帰ってきたら、ちゃんと彼のことをハッジって呼んであげないと、だめだよ」と親切なアドバイスを受けました。

実際、アブバカールがハッジになって帰ってくると、運用部全体がウキウキした、クリスマスとお正月が一度に来たような楽しいムードに包まれたのには、本当に驚きました。

このようにメッカは世界中のすべての回教徒のための聖地なのであり、それがたまたまサウジアラビアに所在するからといって、サウジアラビア政府は勝手に巡礼の運営方針を決めるわけにはゆかないのです。

いいかえればサウジアラビア政府はメッカのカストディアン(財産の保管人)であり、それを着服するような素振りを見せることは許されないのです。

この「メッカのカストディアンである」というのはサウジアラビアに君臨するサウド家の最も誇りにする責務であり、それをちゃんとやり遂げるということがサウド家の正統性の証しとなっていると言っても言い過ぎではないでしょう。

さて、問題は同じ回教徒にもいろいろな宗派があるということです。大きな宗派としてはスンニ派とシーア派があります。

乱暴に分類すればサウジアラビアはスンニ派で、イランはシーア派です。

このスンニ派とシーア派の間の対立は、昔から存在したのですけれど、近年、とりわけ先鋭化しています。

1月にサウジへの渡航ビザをめぐってイラン政府とサウジ政府の間で悶着があり、イランは外交官をサウジアラビアから引き揚げました。つまり国交の断交です。在テヘランのサウジアラビア大使館がイランの群集に襲撃された事件も、断交の背景にあります。

サウジ政府はネット上にビザ受付のサイトを設置するので、オンラインでビザ申請すれば? と提案しました。それに対しイランはあくまでもイラン国内にビザを発行する場所を設けて欲しいと主張したわけです。

ところでメッカへの巡礼は毎年、沢山の人が訪れる(世界中に回教徒は16万人います)ので、押すな押すなの混雑が、事故を招く(去年は1千人が圧死しました)こともありますし、巡礼に混じって過激派が狼藉を働くというようなリスクも当然、存在します。実際、1979年にはメッカ立てこもり事件がありました。

こうして考えてくると、今日のイラン政府の発表は、あからさまなサウジアラビアに対するdisりだと受け取ることが出来ます。さらに言えば、イラン対サウジというライバル心が、危険なほどエスカレートする前兆とも言えるのです。


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