ゲーミングスマホの出遅れが大きく影響したASUSの2018年を振り返る:山根博士のスマホよもやま話

低価格でコストパフォーマンスに優れたスマートフォンを次々と送り出していたASUSですが、2018年の同社のスマートフォンビジネスは思うような結果を出せずに終わっています。ZenFoneシリーズは特徴と優位性に欠けてしまい、ハイエンドモデル、ミッドレンジモデル、エントリーモデル、いずれも他社製品との差別化に苦しんでいます。 2014年に登場したZenFoneはコストパフォーマンスの高さから世界的なヒット製品となりました。しかしZenFoneがお手本としたシャオミなど中国メーカーが次々と海外へ進出を図り、価格と性能面で大きなライバルにまで成長しています。一方ハイエンドスマートフォンは「ZenFone 5Z」の価格がSnapdragon 845にROM128GBで6万9800円(税別)と安いことからわかるように競争力は十分あるものの、ブランド力やデザインでアップルやサムスンと並ぶ製品とはなっていません。 価格面では12月に日本で発売した「ZenFone Live (L1)」が1万6800円(同)であるようにASUSは低価格モデルも得意としています。しかし価格だけでの勝負は短期的には利用者を増やしますが、長期的にはブランドロイヤリティーを高めることはできません。次の買い替え時に他のメーカーの同じ価格帯のものを買う利用者も多いでしょうし、さらに上の機能を求めたときに、魅力ある製品が無くては他社へ流れてしまうでしょう。 ASUSの中核となる製品として2018年に登場した「ZenFone 5」シリーズは機能やデザインでの差別化はできていません。2月の発表時点では「iPhoneより小さいノッチ(ディスプレイ上部の欠き取り)」やAI機能での差別化が売りでしたが、今やどのメーカーもノッチが当たり前です。加えて価格もZenFone 5が5万円超えとなり、過去の「コスパに優れて買いやすい」イメージもなくなってしまいました。 現在の日本のASUSのスマートフォンラインナップを見ると「5」「Max」「Live」という製品に分かれていますが、統一性がなくわかりにくいところでしょう。それに加えて量販店では昨年のモデルとして「4」「Selfie」といった名前のモデルも引き続き販売されています。日本のSIMフリー機市場でライバルとなるOPPOは「R」と「A」、ファーウェイは「P」「Mate」「nova」と明確な製品名で展開を行っていることと比べると、ASUSの製品名はその時の流行などにまかせてつけられた、という印象を持ってしまいます。 とはいえ6月に台北で開催されたComputex 2018で発表されたゲーミングスマートフォン「ROG Phone」はカスタムチューンによる高速CPUやゲーミングデバイスらしいクールなデザイン、さらに豊富なアタッチメントを用意した「ASUSオンリー」の製品として大きな話題を呼びました。ROG Phoneはゲームをしないユーザーにもハイパフォーマンス端末として売り込むチャンスがあったのです。 ところがROG Phoneが市場に出てきたのは10月過ぎ、日本では11月でした。当初は台湾で7月発売予定で、日本でも夏の遅く、少なくともiPhone2018年モデルが出る頃にはライバルとして出てくると筆者は考えていました。しかし11月では「iPhone XS/XR」が出た後であるばかりではなく、ファーウェイの「Mate 20 Pro」の発表とほぼ被ってしまい、さらにはOPPOの「FIND X」や「R」シリーズが出てくるなど、ROG Phoneの話題をかき消す製品で市場はあふれてしまっていました。ROG Phoneで話題を引きつければZenFoneシリーズへの注目も集まっただけに、この遅れは残念です。 ASUSがZenFoneでスマートフォン市場への参入を本格的に開始したとき、グローバル市場では中国メーカーとすみ分けができ、ASUSの販路(PC系)と新たにキャリアを開拓することで数を稼ぐことができると考えたはずです。しかし先進国のスマートフォン需要は買い替えが主体となり、販売数を伸ばすためには新興国へ積極的に展開する必要があります。とはいえ世界最大の中国市場に入り込む余地はなく、2位のインド市場はサムスンの厚い壁をシャオミが価格攻勢で打ち破ると、それを追いかけるように中国メーカーも攻勢をかけています。ASUSの製品を売り込むためには製品そのものに魅力がなければ厳しい時代になっているわけです。 ファーウェイはライカのカメラをとAIプロセッサをフラッグシップモデルのアピールポイントとしています。OPPOやVivoはデザイン、セルフィーと明確なメッセージを伝えていますし、シャオミはずばり価格の安さで人気を得ています。ASUSはアップルやサムスンに並ぶ製品を出そうとハイエンド製品にも注力していますが、ミドルレンジクラスの数を稼げる製品に特長が欠如しています。ZenFone Maxの「Max」も、アップルがその名を使ってしまうと別の意味にとらえられてしまうでしょう。 ASUSのスマートフォン新製品はグローバルで約10モデルが登場しました。これは2017年の約20モデルから半減しています。製品数を絞ることでわかりやすいラインナップに整理したのでしょうが、まだまだ個別の製品の差別化はできていないと感じます。 ASUSがブランド力を高めるためには、ROG Phoneのような特徴的かつハイスペックな製品を頭に置き、明確に区別化された下位モデルを展開する必要があるでしょう。「高性能だけど価格が安い」でブランド力が高まらないのはシャオミがすでに経験していることです。2019年は「ZenFone 6」が出てくるでしょうが、ROG Phoneが登場したときほどのインパクトある製品ならば、ASUSが再びスマートフォン市場の話題の中心になることは間違いありません。2019年の奮起を願いたいものです。

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