オンデマンド・エコノミーって、つまり終身雇用制度の賞味期間が切れたってコトだヨ
大手ベンチャー・キャピタル、KPCBのパートナーのひとり、メアリー・ミーカーが毎年「インターネット・トレンズ」というスピーチをします。
今日、「インターネット・トレンズ 2015」のスライドがUPされて、それがシリコンバレーで話題になりました。今回のプレゼンではオンデマンド・エコノミー（On-demand economy）にかなりの紙数が割かれていました。
オンデマンドとは、「必要なときに必要なだけ」という意味です。そしてオンデマンド・エコノミーという言葉が、しばしばオンデマンド・レーバー（On-demand labor）と互換的に使用されていることからも判る通り、オンデマンド・エコノミーで声が掛るのは、主にサービス業などの単純労働です。
ウーバー（Uber）は、「ちょっとアッシー君、やってくれないかな？」という時にスマホでカンタンに呼び出せる運転手のサービスに他ならないし、それ以外にも「ちょっとスーパーで買い物してきて！」とか、「これをちょっと届けてきて」というような場合にも、オンデマンド・レーバーは役に立ちます。
ウーバーが登場したことでタクシー会社は大打撃を受けました。それと同じように、これからどんどん加速度的に広がってゆくフリーランス経済はグラフィック・デザイナーや編集者のような比較的高スキルな職種のみならず、よいとまけ的な底辺の役務提供者まで、あまねく労働市場全体を呑み込んでゆくことは、ほぼ確実です。
するとこれまでは「クリスマス商戦期間だけ人手が足らないのでパートを雇おう」という感じだったのが、仕事の増減に合わせてオンデマンド・レーバーを起用したり、お払い箱にしたりということを、1時間単位、あるいはワントリップ単位で出来るようになるのです。
でもちょっと待って！
そんなにカンタンなことなら、なぜ今まで定着しなかったのでしょうか？
それはサーチ・コストやインフォメーション・コストが高かったからです。いままでは「あーっ、終電乗り遅れた！」と思った時、（誰かアッシー君、やってくれないかなぁ？）と思っても、すぐにホイホイやってくる便利なヤツが思い浮かばなかったので、しぶしぶ元カレに電話したら思いっきり電話切られた…とか、そういう問題があったわけです。
でもウーバーなら、サーチ・コストやインフォメーション・コストは無いに等しいです。最も評判の良い運転手を、最も速く、そして廉価に呼び出せるわけです。これは利用者の視点からすれば素晴らしいことです。でも労働者の立場からすれば完全競争下で自分のサービスが瞬時にコモディタイズすることを意味します。
スマホが全ての国民の手に行き渡った結果、ちょっとした役務のマーケットプレースが出現し、企業や個人は「あの人を常時雇っておかないと、必要なときに来てくれない」ということを心配することなく、常にウーバーのような役務のマーケットプレースに依存することが出来るようになるわけです。
これは音楽に例えるなら、昔は好きなアーチストのCDを買い置きしていたのが、ストリーミング・サービスが出てきたのでCDを買わなくなった…というのと似ています。「CDが売れなくなったので、アーチストは喰えなくなった」そういう嘆きを、今後はタクシーの運転手からも聞く日が来ます。
問題は、ウーバーのビジネスモデルはタクシーだけでなく、ありとあらゆるサービス業に応用が可能だということです。これをウーバーの社員はウーバーナイズ（Ubernize）と呼んでいます。ウーバーの進出で正社員が必要でなくなると、彼らは解雇されるわけですが、そのような原因での解雇のことをアメリカではウーバード（Ubered）と言います。あるいはディスラプテッド（Disrupted）と言う場合もありますけど、同じ事です。
スマホの普及でサーチ・コスト、インフォメーション・コストが低下したことから、好むと好まざるとにかかわらず、向こう数年間の間に経済のウーバー化は猛烈な速度で進行します。
折角、死ぬ思いで就活して、大企業に正社員で入社しても、それで終身雇用は安泰…なんて甘いコトは考えない方がいいかもね。
（文責：広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack）
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今日、「インターネット・トレンズ 2015」のスライドがUPされて、それがシリコンバレーで話題になりました。今回のプレゼンではオンデマンド・エコノミー（On-demand economy）にかなりの紙数が割かれていました。
オンデマンドとは、「必要なときに必要なだけ」という意味です。そしてオンデマンド・エコノミーという言葉が、しばしばオンデマンド・レーバー（On-demand labor）と互換的に使用されていることからも判る通り、オンデマンド・エコノミーで声が掛るのは、主にサービス業などの単純労働です。
ウーバー（Uber）は、「ちょっとアッシー君、やってくれないかな？」という時にスマホでカンタンに呼び出せる運転手のサービスに他ならないし、それ以外にも「ちょっとスーパーで買い物してきて！」とか、「これをちょっと届けてきて」というような場合にも、オンデマンド・レーバーは役に立ちます。
ウーバーが登場したことでタクシー会社は大打撃を受けました。それと同じように、これからどんどん加速度的に広がってゆくフリーランス経済はグラフィック・デザイナーや編集者のような比較的高スキルな職種のみならず、よいとまけ的な底辺の役務提供者まで、あまねく労働市場全体を呑み込んでゆくことは、ほぼ確実です。
するとこれまでは「クリスマス商戦期間だけ人手が足らないのでパートを雇おう」という感じだったのが、仕事の増減に合わせてオンデマンド・レーバーを起用したり、お払い箱にしたりということを、1時間単位、あるいはワントリップ単位で出来るようになるのです。
でもちょっと待って！
そんなにカンタンなことなら、なぜ今まで定着しなかったのでしょうか？
それはサーチ・コストやインフォメーション・コストが高かったからです。いままでは「あーっ、終電乗り遅れた！」と思った時、（誰かアッシー君、やってくれないかなぁ？）と思っても、すぐにホイホイやってくる便利なヤツが思い浮かばなかったので、しぶしぶ元カレに電話したら思いっきり電話切られた…とか、そういう問題があったわけです。
でもウーバーなら、サーチ・コストやインフォメーション・コストは無いに等しいです。最も評判の良い運転手を、最も速く、そして廉価に呼び出せるわけです。これは利用者の視点からすれば素晴らしいことです。でも労働者の立場からすれば完全競争下で自分のサービスが瞬時にコモディタイズすることを意味します。
スマホが全ての国民の手に行き渡った結果、ちょっとした役務のマーケットプレースが出現し、企業や個人は「あの人を常時雇っておかないと、必要なときに来てくれない」ということを心配することなく、常にウーバーのような役務のマーケットプレースに依存することが出来るようになるわけです。
これは音楽に例えるなら、昔は好きなアーチストのCDを買い置きしていたのが、ストリーミング・サービスが出てきたのでCDを買わなくなった…というのと似ています。「CDが売れなくなったので、アーチストは喰えなくなった」そういう嘆きを、今後はタクシーの運転手からも聞く日が来ます。
問題は、ウーバーのビジネスモデルはタクシーだけでなく、ありとあらゆるサービス業に応用が可能だということです。これをウーバーの社員はウーバーナイズ（Ubernize）と呼んでいます。ウーバーの進出で正社員が必要でなくなると、彼らは解雇されるわけですが、そのような原因での解雇のことをアメリカではウーバード（Ubered）と言います。あるいはディスラプテッド（Disrupted）と言う場合もありますけど、同じ事です。
スマホの普及でサーチ・コスト、インフォメーション・コストが低下したことから、好むと好まざるとにかかわらず、向こう数年間の間に経済のウーバー化は猛烈な速度で進行します。
折角、死ぬ思いで就活して、大企業に正社員で入社しても、それで終身雇用は安泰…なんて甘いコトは考えない方がいいかもね。
（文責：広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack）
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